外注ライターを増やし、記事本数も出るようになり、制作フローも一応は整っている。それでも、制作の中心にいる自分だけが忙しい。修正判断、方向性のすり合わせ、クライアント対応。「ここは直したほうがいい」「これは意図とズレている」そう判断している時間が、思った以上に多い。
SEOも構成も、一通り理解している。ツールも使っているし、ライターも増やしている。それなのに楽にならない。
この状況は、努力不足やスキル不足が原因ではありません。多くの制作現場で、ある共通した構造ができてしまっているだけです。
この記事では、「どうすれば楽になるか」を直接的に語るのではなく、なぜ楽にならない状態が生まれるのかを整理します。
楽にならない現場に共通する3つの構造的原因
記事制作が楽にならない現場には、いくつか共通点があります。やり方や規模は違っても、構造としてはよく似ています。
ここでは、その中でも特に影響が大きい3つの構造的な原因を整理します。
原因①:記事制作のゴールが納品になっている
多くの現場では、無意識のうちに記事制作のゴールが「記事を公開すること」になっています。
もちろん、公開しなければ成果は出ません。ただ、ゴールが「納品」になっていると、次のようなことが起きます。
- どこまで書けば十分なのかが判断できない
- 修正の基準が「なんとなく」になる
- 最終判断をできる人が限られる
結果として、「これでいいかどうか」を決める役割が、特定の人に集中します。
ライターは書けている。でも「これでOKかどうか」は決められない。
だから編集側が毎回、判断を引き取ることになります。
これはスキルの問題ではなく、ゴール設定の問題です。
原因②:構成や意図が個人の感覚で整理されている
「この見出しの流れ、ちょっと違うんだよな」
「言っていることは合っているけど、伝えたい方向とズレている」
こうした違和感を覚える場面は多いはずです。
ただ、その違和感の正体を言語化しようとすると、意外と難しいものです。なぜなら、構成や意図が資料や設計として明文化されていないことが多いからです。
- 編集者の頭の中では成立している
- でもライターには完全には共有されていない
この状態だと、修正は必然的に発生します。そして修正理由を説明するたびに、「自分が見たほうが早い」という判断につながっていきます。
原因③:編集という役割が、業務として定義されていない
多くの制作現場では、ディレクターが編集を兼任する形が一般的です。そのこと自体が問題になるケースは多くありません。
問題になりやすいのは、編集という役割が「業務として明確に定義されていない」状態で兼任されている場合です。
よくある役割分担は、次のような形です。
- ライター:本文を書く
- ディレクター(編集):構成・方向性・品質の判断
- 校正:誤字脱字・表記揺れのチェック
この整理自体は、かなり現実的です。ただし、実際の現場ではディレクター(編集)の役割が曖昧なまま進行していることが少なくありません。
たとえば、
- どこまでを「編集判断」とするのか
- どの基準でOK/NGを出すのか
- ライターが自分で判断していい範囲はどこか
こうした点が明文化されていないと、判断はすべて「その人の感覚」に依存します。結果として起きるのが、
- 最終的な判断は毎回ディレクターが行う
- 修正の意図をその都度説明する必要がある
- 不安な部分は「自分で直したほうが早い」になる
という状態です。
本来、編集という役割は「全部を見る人」ではなく、「判断の基準と範囲を設計する役割」です。その設計がないまま兼任が続くと、人を増やしても、制作量を増やしても、編集負荷だけが特定の人に集中し続けます。
原因ごとに考える、記事制作を楽にするためのアプローチ
前章では、記事制作が楽にならない現場に共通する3つの構造的な原因を整理しました。
ここでは、それぞれの原因に対して「何を変えると、制作が少しずつ楽になるのか」を見ていきます。
ポイントは、やり方を増やすことではなく、判断の置き場所を変えることです。記事制作の外注がうまくいかない原因は、外注先のスキルではなく、目的・意図・情報の設計が整っていないことにあります。
この記事は何ができるようになればOKかを最初に決める
記事制作のゴールが曖昧なままだと、最終的なOK判断はどうしても人に依存します。
その状態を避けるために必要なのは、「この記事を読んだ人が、どうなっていればOKか」を決めておくことです。
たとえば、
- 読者が何を理解できればよいのか
- どんな判断ができる状態になれば成功なのか
ここが決まっていると、原稿を見る視点が個人の「好み」や「感覚」から離れます。
重要なのは、このゴールを編集側だけが分かっている状態にしないことです。ライター自身が「この記事は目的を満たしているか」をある程度判断できるようになると、修正は大きく減ります。
結果として、編集・ディレクターが毎回すべてを引き取る必要がなくなります。
なぜその構成にしたのかを共有する
「構成案は作っている、それでも修正が減らない」
この場合、問題になっているのは構成の質よりも、その構成にした意図が共有されていないことです。
- なぜこの順番なのか
- どこが一番重要なのか
- 読者にどう理解してほしいのか
こうした意図が共有されていないと、ライターは見出しの並びだけを手がかりに書くことになります。
その結果、「内容は合っている。でも、狙っている方向と少し違う」という原稿が生まれやすくなります。
「なぜこの構成なのか」を一言添える。それだけでも、原稿のズレはかなり減ります。
編集・ディレクター・校正の判断範囲を分ける
ディレクターが編集を兼任する体制は、多くの現場で現実的な選択です。問題になりやすいのは、その中で誰が、どこまで判断するのかが曖昧な場合です。
たとえば、
- 内容や方向性の判断は誰がするのか
- 表現の調整はどこまで編集が見るのか
- 誤字脱字・表記揺れはどこで止めるのか
この線引きがないと、不安なポイントはすべて編集・ディレクターに集まります。
結果として、
- 「一応見ておこう」が積み重なる
- 修正理由を毎回説明する必要が出てくる
- 結局、自分で直す方が早くなる
という状態になります。
判断範囲を分けるというのは、作業を減らすことではありません。判断を任せられる範囲を、あらかじめ決めておくことです。それだけで、編集・ディレクターの負荷は確実に下がります。
今すぐできる!記事制作を少しでも楽にするツールと環境設定
ここまでは、記事制作が楽にならない理由を記事制作のフローや判断の構造から整理してきました。
ただ実際の現場では、構造が整っていても「単純に疲れる」「集中が続かない」という問題が残ります。
この章では、制作のやり方を大きく変えずに、今日から取り入れられる範囲で、記事制作を楽にする方法を紹介します。
よく使う表現は単語登録する
記事制作では、毎回ほぼ同じ表現を繰り返し使っています。
- 「たとえば」「一方で」「具体的には」
- 業界用語やサービス名
- 修正時によく使う指摘文
こうした表現を単語登録しておくだけで、入力の手間が減るだけでなく、表現を考え直す回数も減ります。
ポイントは、速く打つことよりも「考えなくていい表現」を増やすことです。
編集やディレクションの立場でも、定型の修正コメントを登録しておくだけで、フィードバックにかかる負荷は確実に下がります。
音声入力を活用する
音声入力というと執筆スピードを上げるための手段というイメージを持たれがちです。ただ、編集やディレクションの立場では、別の場面のほうが効果を感じやすいことがあります。
たとえば、ライターへの指示コメントを作るときやなぜこの構成にしたのか、その意図を説明するときといった場面では、文章として整えようとするより、まずは話したほうが早いことが多いです。
頭の中では説明できているのに、文字にしようとすると時間がかかる。その結果、指示が短くなり、意図が伝わりきらない。
音声入力を使うと、考えていることをそのまま言葉にできます。
誤字脱字や表記揺れはツールに任せる
誤字脱字や表記揺れのチェックで大事なのは、「どのツールを使うか」よりも、毎回同じ基準でチェックできるかです。
Web上の校正ツールを使う方法もありますが、現場によっては、
- 自社独自の表記ルールがある
- サービス名や専門用語が多い
- 「これは揺れてOK/これはNG」という判断がある
といったケースも多いと思います。
こうした場合、スプレッドシートなどで簡単なチェック用ツールを自作するほうが、現場には合うことがあります。
- 表記ルールを一覧化する
- よくある誤りを洗い出す
- 原稿を貼り付けて確認できる形にする
それだけでも、人が毎回目視で確認する量は大きく減ります。
FEDiT.では、記事制作や編集業務とあわせて、こうした簡易的なチェックツールの作成も支援しています。
特別なシステムを導入しなくても、現場に合った形で「人が見なくていい作業」を減らす。それだけで、制作はかなり楽になります。
記事制作が楽にならないのは、頑張り方の問題ではない
記事制作が楽にならない理由は、個人の努力やスキル不足ではありません。
多くの場合、
- 記事のゴール
- 構成の意図
- 判断や役割の置き場所
こうした点が曖昧なまま、制作が進んでいることが原因です。
この状態では、人を増やしても、ツールを入れても、最終的な判断は特定の人に集まり続けます。
フローや役割を少し整理し、ツールや環境で消耗を減らすだけでも、制作の負荷は確実に変わります。
ただ、その整理自体が負担になっている現場も少なくありません。そういうときは、編集や設計を、外から一部支えるという選択肢もあります。
記事を書く人ではなく、制作が回る形を一緒に整える人。そうした存在が入るだけで、制作は無理なく続けられるようになります。
FEDiT.では、記事制作に加えて、
- 構成や意図の整理
- 編集・ディレクションの支援
- チェックツールの作成
など、制作現場を楽にするための設計も支援しています。
今すぐ何かを決める必要はありません。「どこが詰まっているのか」を整理するだけでも構いません。
記事制作が楽にならない理由を、一度、外から一緒に見直してみる。このコラムが、そのきっかけになれば幸いです。


